「動物の絵-日本とヨーロッパ-」@府中市美術館

府中市美術館 開館20周年記念 動物の絵 日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり

 

初めて府中市美術館に行ってきました。遠かった、すっごい遠かった。駅から歩ける距離だったけどバスに乗って、それはそれで遠く感じてしまうっていう。

しかし美術館自体はとても良い美術館でした。市民に向いている開かれた美術館。寄り添って工夫して身近にあろうとする感じがとても好印象で、近かったら通ってたかもしれないなと思った。遠いから次がいつかはわからないけど。

 

そして無料の講座があり、気付いた時には日本講座が終わってしまってたので西洋講座に足を運びました。日本講座聞きたかった、、、

久々にノートを取りながら聴かせていただいたので、軽く書き起こしして今後見返せるように。講師は学芸員の音さん。

 

そもそも西洋画に動物主体の絵画が少ないのは西洋画が宗教画がメインであり、宗教には主題があり動物はメタファーの一部であるためメインになりようがない。加えてリアルに描くことが求められるルネサンス以降の西洋絵画は目の前にいないと書くのが難しいんだろうなと思った。絵画の中でそこに書かれる意味がないとNGだから意味のない動物は書けない。そしてそもそも西洋はギリシャ起源だったかな?で人間中心主義の地域ですよね、これ私がどっかの本で読んだ知識だけど、だから人間主体以外のブツを作りようがないメンタリティーの時代だったんだろうと思った。

さて、16世紀ごろはまだ聖書など宗教画のなかでしか許されなかった動物が、19世紀には絵画のモチーフとして使われ始める。例えば風景画あと労働画(でいいのかな?)。コローとかミレーとかのバルビゾン派から印象派まで、宗教画からの脱却が目新しいムーブメントとして時代を席捲するようになる。これは貴族階級だけが手にしていた絵画から庶民が絵画を手に出来るようになった時代の変化とそれに伴って庶民でも理解しやすいモチーフで人気が出やすかったこともあるだろうとのこと。前半は私の勝手な想像。後半は、それで、動物を含めた絵画が増加した。

話は戻るが、そもそも西洋というかキリスト教では神が動植物を管理・支配させるために神と同じ姿をした人間を創造した、という話がおおもとにある。そのため心理的序列が「神>>>人間>動物>植物」となっていて、だからつまり動物園とは神が創造した世界の再現なんである。これはもう絵画史ではないけれどこれが下地にあるからキリスト教圏は動物愛護に熱心なんである、支配するから保護するに変わっただけと言えばだけ。良い悪いではない。

じゃぁ日本はというと、アジア圏のなかでも動物大好き民族であった。鎌倉~室町時代に作られたとされる涅槃図には釈迦のそばにたっくさんの動物が描かれている。結構種類も多い。室町と時代が下ると種類も増えるしちょっと絵がかわいくなる。インドや中国と比較しても涅槃図の動物率は日本が群を抜いているようで、それだけ古くから色々な動物と関わって共生してきたことが伺える。現在でも日本列島って動物種かなり上位なんじゃなかったかな?どうだったかな。

19世紀に進化論が誕生するんだが、当初神殺しなんて言われていた。キリスト教からしたらそれはそうなのだが、人間については記載されていないそう。守りに入ったな…!と思ったりした。これで動物園の入場者数は爆増したらしく、主にやっぱりサルコーナーが顕著。エドワード・モースという米動物学者が日本に進化論を持ち込んだ際には日本人が簡単に受け入れたことに驚いたとか。ちなみに進化論の支持者は数年前でヨーロッパ圏はだいたい日本と同等、アメリカはなんと約半数。個人的にはこれピューリタンが移民の主だったという話がキーなのではと思ってるんだけどどうだろう?イギリスからアメリカへ大量移民があった時代はちょうどピューリタンがイギリス国内で多かったタイミングで、ピューリタンが移民の主要となったからアメリカは今でも中絶反対だったり意外なところで厳格だったりするって聞いたことがある。話がそれた。

進化論はキリスト教的思考と反するから、反発に次ぐ反発で絵画界は(だけじゃないけど)色々なムーブメントが起きた。ゴーギャンは理性の否定と野性の肯定というテーマを以ってタヒチに移住し、荒っぽく素朴で野性的な動物を版画で数多く残している。

※そもそもキリスト教というか一神教西アジアという人間が住居するにはなかなかハードな土地から生まれた経緯があるからそれが良いとか悪いとかではないという注釈

講座を聞いて、やっぱり絵画史も当たり前だけど歴史の一部であり歴史は宗教と切っても切り離せないというかなんというか…と思ったりした。ある意味キリスト教圏はわかりやすいのかもしれないな。日本の講座はどうだったんだろうか、配信してほしいね。私個人としては日本と西洋の大きい違いの一つに「カワイイの表現」があって、西洋はカワイイは良くないとされている時代がとても長く今でも引きずってると思うので、だからこそペットだとしてもリアルを追求しかわいくデフォルメして描いたりしないんじゃないかななんて。かわいいって、結構日本独特の思考なのか、な?

 

展示で好きだったもの一覧

葛飾北斎/雪中鷲図 大きくて三色刷りぽかった。かっこいい。北斎の肉筆画そんなに好きだと思ったことないけどこれはとても好きだった。

葛飾北斎「雪中鷹図」

葛飾北斎/河豚と大根図 大根の透明感

・原在照/三猿図 描表装(絵の周りの飾り絵)がかわいい

・曽我蕭白/游鯉図 オシャレ

伊藤若冲/鶏図 顔がヤバス。ほぼギャグ。

www.fujibi.or.jp

・鍬形蕙斎/鳥獣略画式 一筆書きの系譜っぽさある

sumally.com

・北鼎如蓮/鯉図 アングルとまつげが良い

ピカソ/仔羊を連れたポール 4色程度の少ない色でシンプルで上手い

https://www.google.com/search?q=%E3%83%94%E3%82%AB%E3%82%BD%E3%80%80%E4%BB%94%E7%BE%8A%E3%82%92%E9%80%A3%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB&sxsrf=AOaemvIDTw0JpljjAU1UXu5uIahneYZkhQ:1636633946224&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=2ahUKEwifrPfHqJD0AhUoyosBHYLiDoQQ_AUoAXoECAEQAw&biw=970&bih=710&dpr=1.25

徳川家綱/枯木うそ鳥図 クレヨンぽい水墨画がすごい

 

・春日鹿曼陀羅図/春日大社

独立している神秘性みたいなものを感じた。古代ケルトなど狩猟民族では鹿は神として扱われていることが多いらしい。この曼荼羅図では鹿は人間と関わりを持たない感じがあるというか、白鹿という独立したひとつの神、がしっくりくる。

一方でモローの一角獣は、これはこれでスタンダードな動物画ではないそうだけど、違う種類の怖さがあって畏怖には変わりないかもしれないけど、でもやっぱり人間との繋がりを感じる。縦軸じゃなくて横軸の感じ。

やっぱり人間と神(的なもの)の位置関係がとても特徴的だなぁと横並びの鹿(馬)を見て思ったりした。

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ちなみに?ペット代表の犬の絵。日本は応挙が18世紀に目に白目を入れて表情を作っている。基本的に人間以外で白目を見せる動物はあまりいないようだけど、科学的根拠なしで応挙は白目を子犬に入れてかわいいを作った。一方西洋、イギリスでは19世紀の犬の絵で白目が登場する、これは科学的根拠があってからのと言ってたかな?一世紀以上の差がここには存在していて、やっぱり私はジャパニーズカワイイ概念が軸にあるんじゃないかなぁと思う。